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vol. 9 くじら戦記――会社と徹底抗戦した1年間の記録 1/6
ゆみ
明治学院大学文学部芸術学科2011年度入学。長谷川ゼミ6期生。卒業論文のテーマは「データベース化する恋愛-イメージを模倣する-」。卒業後は小さなメーカーに勤務。
2015年3月。わたしは長谷川ゼミを卒業した。
そこから約1年とちょっと。小さな町工場のようなメーカーに所属したわたしは、がむしゃらに、やみくもに、そして果敢に上司にたてついていた。
これは、とある山手線沿いの貸しビルの一室で起きた、ちょっとした戦記である。
新社会人、「ものづくり」に携わる
うだるような暑さの中、わたしは新橋の烏森通りを歩いていた。パチンコ屋が見えてきたら左に曲がり、そのまま道なりにまっすぐ進む。横断歩道を渡り右に曲がった先にあるレンガづくりの建物の2階へ上がり、受付で受話器を取る。一度ひかえめに咳払いをし、「お世話になります」と一声。
わたしの仕事は、自社工場でつくられたプラスチック製品を法人のお客様に提案し、利益を生むことだ。一日の大半をぐーたらとベッドの上で過ごし、2リットルペットボトルのお茶をラッパ飲みしながらパジャマのままゲームに興じるような不摂生不衛生極まりないこのわたしが、まさか小奇麗なスーツに身を包み東京という大都会を闊歩しているとは夢にも思わなかった。が、現にいまわたしはここで、確かにお得意先の代理店で手を変え品を変え自社製品をプレゼンしているのであった。
~半年前~
わたしは就職活動に苦戦していた。就活をはじめる時期が遅かったため、そもそも新卒として受けられる会社自体もほとんどなかった。わたし自身も就職することに対して特段と意欲もなく、働きたいわけでもないけれど「とりあえず正社員」という道をなんとなく選択したかったのである。
そんな中、求人広告の中から「第二新卒歓迎 未経験OK ものづくりの企画から携われます♪」という文言を見つけた。なんとなく楽しそうだなぁと軽い気持ちで応募し面接を経て、あっけなく内定をいただいたのがいまの会社である。