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vol. 12 「迷走の4年間」から帰ってくるまで 1/5

まゆゆ

2014年度明治学院大学大学院文学研究科芸術学専攻博士前期課程修了、長谷川ゼミ4期生。卒業論文のテーマは『アイドル声優の成立』、修士論文は『「ゆかり王国」はいかに語られたかーー田村ゆかりファンの言説分析』。卒業後はアニメ系専門学校にて教務事務に従事、転職後は人材紹介会社にてキャリアアドバイザーの仕事をしている。

 

 2015年3月、私は明治学院大学大学院を修了した。この原稿を執筆している2019年4月でちょうど4年が経つ。迷走に迷走を重ねた4年間だった。しかしふりかえれば、全ての経験は必要なものだったと、今なら思える。

 

 そんなイレギュラーで不思議な4年間について、ふりかえってみたい。

大学院卒業、初出勤日前夜まで

 

 2015年1月、無事に修士論文を提出し、口頭試問を終えた。声優・田村ゆかりのファンを卒業論文も修士論文でも取り上げた。執筆では迷走もあったが、やれることはやりきった。そして博士後期課程に進むのではなく、就職の道を選んだ。はじめにアニメ系専門学校の教務事務職に応募すると、すぐに採用となった。それ以外にとくに求人を探していたわけではなかったから、採用されたときには驚いた。

 

 早々に内定をもらえたおかげで、学生のうちにやっておきたいことをやろうと思って3月までを過ごした。卒業式には、田村ゆかりのファンとして所有していたロリータ服を着用し、帰りにそれを古着屋に売った。大学院修了とともに、ファンとしての自分は置いていくつもりだった。学部時代から続けていたドトールでのアルバイトは3月31日まで続けて、最終日には打ち上げと称して午前2時まで飲んでいた。4月1日の初出社の朝、眠い目をこすりながらも、学生時代はやりきったという気持ちをいだきながら、勤務先に向かったことを覚えている。

 

 こんなふうにして、私は6年間の大学・大学院生活を充実した気持ちで終えた。同時に、初めて会社員として働くことに対して大きな期待を寄せていた。アニメ系専門学校の仕事で、アイドル声優のファンについて論文を書いてきた経験が活かされるかもしれないという喜びを感じていたし、大学院までに得た知見をさらに積み上げることができるのではないかとも思っていた。

 

 けれども、その意気込みは出社初日にはしぼんでいた。

「迷走の4年間」から帰ってくるまで
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