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vol. 11 “絵”に連るれば唐の物 6/6
シャンクス
これからが本当の勝負
深く考えずに就いた営業の仕事だったが、自分でも驚くほど、この仕事をやって本当に良かったと感じている。実際、展示会の開場時間が終わっても21時まで電話をし続けなければいけないし、優待展の準備では上司から詰められるし、ときには休日出勤もさせられるし、休日でも御構い無しに電話はかかってくるし、社員間で人のお客さんを奪っただの奪われただのいろんなごたごたはあるし、気が滅入ることもしばしばだが、お客さんと打ち解けあって私を信じて買ってもらえたらもう、それまでの辛さなんて吹き飛んでしまう。この3年間で自分のお客さんは300人以上になっているが、その一人ひとりは一度も忘れることなく名前を聞けばすぐに思い出せる。
更に昨年4月からはチームリーダーになり、1人の同期と4人の後輩を育てる立場になった。他のチームリーダーは10年以上キャリアがあったり50人以上いる営業の中でもTOP10に入る売り上げだったり、壇上で表彰される実績をつくった人だったりと凄腕揃いなのだが、私だけが正直そのどれにも当てはまらない。ふと見下されたような態度を受けると(過敏になっているだけかもしれないが)、どうせ私なんか大して期待されていないだろうと捻くれることもあるが、だからこそやってやろうという気になる。私にはお客さんとの不思議で大切な関係をちゃんと知っているという自信があるし、多少なりとも自分という殻を破って成長したという確信もある。
しかし社会や人生はそう甘くはないだろう。一皮剥けたとはいえ、やはり大切なのはこれからをどう過ごしていくかだと思う。自分のコンプレックスを脱ぎ捨てたり上手く付き合っていくことは、その人の人生を愉しんで歩んでいくための第一段階にすぎないと考えている。だから、このタイミングで責任ある立場を任されたのは本当にチャンスだ。チームリーダーの声が掛からなかったら、これほどに大きな変化にこんなに早く自分で飛び込んでいく機会をつくれなかった。今度は自分だけでなく、メンバーと建前ではない意味で上手く付き合っていけたら、自分が出来ることの幅が一気に広がるだろう。今までと違って慌てるのではなくどっしり落ち着いた人間になれるかもしれないし、そうでないかもしれないが、どんな自分になれるかわからないことが楽しみだ。
……と、大口を叩いてはいるが、正直のところ、現時点ではチームを一度も達成に導けていないので失敗の連続だ。しかし幸いなことに、それで重鎮たちから失望されたり怒られたりは今のところしていないので、苦しみながらたくさん考えて愉しんで、ときにはお客さんに助けられながら、またあっという間と感じられるほど濃厚な日々にしていくつもりだ。
おしまい