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vol. 7 平成版・東京ガールズブラボー? ──都内で働き暮らす日々のなかで考える 1/5
サラダ
明治学院大学文学部芸術学科2010年度入学、長谷川ゼミ5期生。卒業論文のテーマは『坂本龍一というイメージはいかにつくられたか――1978〜1986』。卒業後、旅行雑誌の編集にたずさわった。
大学卒業から1年
2014年3月、私は長谷川ゼミ5期生として卒論を執筆し、大学を卒業した。
現在は、都内のドラッグストアでアルバイトをして生計を立てる日々を送っている。卒業からちょうど1年が経った今、この1年間を振り返りながら、東京に住み、働く日々のなかで考えてきたことをつらつらと書きたいと思う。
卒業後どこで暮らすか? ──地元と東京は自分にとって異なる場所
私は大学の卒業式を迎える直前、ひじょうに悩んでいた。それは、地元の静岡に戻るか、東京に残るかということだった。両親は、私が大学卒業後実家に戻ってくることを切望していた。娘可愛さにという気持ちはもちろんあったと思うが、それ以外にも理由はある。
実家は築30年の木造一戸建てで、祖父と父の代でローンを支払い、大事に守ってきたものだった。私には弟が一人いるが、小さな頃から言葉の発達が少し遅い。そのため、父ははっきりと言うわけではないものの、この古くも大事な家を私が引き続いて守っていってくれることを望んでいるようにおもう。
大学進学のため上京して、関東の実家通いの友人たちにそのことを話すと、その「家を継ぐ」的な感覚が分からない、自分の親はそういうことは特に言わない、といった反応が返ってきた。それを聞き、当時は自分の父がなんて保守的な考え方の人間なのだろうと思ったものだった。
しかし今は、東京の都市の形成に興味を持っていくなかで、たんに私の父が保守的であるというよりは、土地がありそこに建てられた家を長男が代々まもっていくというような家父長制をベースにした地方の考え方と、都市近郊のベッドタウンにおける一世代限りの核家族の考え方とのギャップなのだろうと考えるようになった。地方と都市を二分してどちらが良いと言うわけではないのだが、そういった感覚のちがいが、家の問題に限らず他にもいくつかあるように感じる。
話は飛んだが、私は卒業後まだ東京に居たいと思っていた。なぜか? ひとことで言えば、こっちのほうが華やかだから……だろうか。はっきりとした理由を言うのはむずかしい。ただなんとなく、こちらにいたほうが面白そうな気がするというだけだ。結局、私は両親の反対を押し切って、東京に残ることを決めた。
1年前も今も、家族のことは大切に思っているし、実家サイドの考え方で考えると、自分のことだけ考えて気ままにしていて、この先どうなっていくだろうと少しだけ不安になることもある。だが、もし気が変わって地元に戻りたいと思うときが来れば、そのときは戻ればいい。それは1年前も今も変わらずそうおもっている。