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高校生が描いた「セルフサービスする身体」

2014年12月公開

 ぼくの以前の著作『アトラクションの日常──踊る機械と身体』(河出書房新社)所収の一篇「アトラクション6 セルフサービスする」が、今年から高校の現代国語の教科書に採録されている。大修館書店の『精選現代文B』と『現代文B上巻』である。

 教科書向けに多少改変・短縮されてはいるものの、この文章が取り扱っているのは、いまや誰にとってももっともなじみ深くありふれたコンビニやスーパーなどにひろく見られる「セルフサービス」だ。

それを、たんなる販売上の技術としてだけでなく、わたしたちの行為や実践のパターンと捉えるならば、セルフサービスの過程においてわたしたちが、テクノロジーと協調的な関係に身を投じるなかで、一個の身体を構築していることがわかる。

 ふだん気にもとめずに遂行しているセルフサービスという行為をとおして、わたしたちの身体がどのように構築され、そこに不可分な形で管理と資本が浸潤しているのか。そして、よりどりみどりの「自由」きわまりないかに見える消費行動が、いかにみずからを縛りつける「不自由」なものであるか。そうしたことを明らかにしている。おそらく高校の現場では、このような水準の理解に達することが、さしあたっての授業の目標となるのではないか。

 ただしこの文章は、その先までを射程に収めることをめざしている。すなわち、そのようにとことん「不自由」なセルフサービス的身体は、同時に、その──外部ではなく──ただ中にこそ、そうした閉塞を切り裂きうる契機を含むことを示唆しようとしているからだ。

 それにしても、あの文章をつかって、高校生にたいしてどんな授業をするのだろう?

 そこへ、編集担当の方から、画像が送られてきた。ある高校で実施された現代国語の試験の答案だという。

 上述のぼくの文章を試験に出し、そこに添えるべき「挿絵を描け」と問うたらしい。担当の先生いわく、「配点2点にもかかわらず、面白い挿絵が続出し」たため、すっかり愉しくなって、その「答案」の一部を出版社に送ってくださったのだという。

 ブログにも書いたとおり、答案の内容はもちろん、この試み自体がとてもおもしろいものに感じられた。送っていただいた「挿絵」7点を、ここに掲載させていただく(クリックで拡大します)。

 授業を実践されたのは、京都市立銅駝美術工芸高等学校・国語科の山本純子先生だ。掲載にあたっては、山本先生、校長先生、教育委員会、そして実際に絵を描いてくれた生徒さんたちから許諾を得ている。ありがとうございました。

*文言修正(141215)