ホーム > 旅の栞OBOGコラム > vol.5 いつき 2/2

vol. 5 核家族──引っ越してからの近況 2/2

いつき

最近の娘のこと

 小さい子にはよくあることだが、娘にも「見えない友達」がいる。娘にとってのそれは「はなちゃん」だ。「はなちゃん」は娘が拾い上げて抱える様子を見ると、どうやらおにぎりくらいのサイズのようだけど、一緒に手をつないで歩いていることもあるので、伸び縮みも出来るのかもしれない。ベンチに座ったとき、間を空けるので詰めて娘に寄ったら、「あー!はなちゃんがすわってたのに!」と怒られたりするので油断ならない。

 たいていは娘と一緒になって喜びを分かち合ったり怒りを表明したりしているので、(娘いわく「はなちゃんもうれしいって!」「もう!はなちゃんもおこってるよ!」)娘の代弁者なのかなと思っていたが、たまに喧嘩したりもしているから面白い。この前は、使わないおもちゃを公園に持っていって放り出したので、「使わないなら持ってきちゃだめって言ったでしょ?」と言ったら、「もう、はなちゃんがもっていくっていうからわるいんだよ。わたしはいらないっていったでしょ?はなちゃんのばか!」とぶつぶつ言っていた。

 見えない友達は他にもたくさんいて、アンパンマンのキャラクターも出てくるのでごっこ遊びの延長かもしれない。娘が嬉しくて興奮していると、とにかくたくさんキャラクターが出てきて大騒ぎを始める。夏に娘を盆踊りに連れていく途中、「あ!バイキンマンもいっしょにいきたいって!あ!ドキンちゃんもいっしょにいきたいって!」とどんどん増えていき、総勢十数名に囲まれながらママチャリを走らせた。

 子供ならではの感受性がある。最近は言葉をどんどん吸収して色々なことを教えてくれるので、話していて楽しい。今はまだ宇宙人を相手にしているような気分で、それはそれで面白いが、やがて主人と二人だったおしゃべりに、子供が加わって、色々な体験や価値観を共有できるようになっていくのだと思う。

おわりに

 やはり守られてぬくぬくとすごしていた同居とは違う。生活に必要なことすべてを自分たちでこなさなくてはならない。引っ越してから色々なことが今までの二倍の密度で沸き起こるような感覚がある。今年はとても濃いなと思う。

 しかし、様々な出来事にさらされるほどに、家族としての結束力も高まる。自分たちの輪郭のようなものが確認できてとても面白い。ペースを掴んで、世間を渡っていく最小単位のチームとして、タフに、フットワーク軽くやっていきたいな、と思っている。

おしまい

核家族──引っ越してからの近況
1 | 2