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2014.11.20
vol. 4 じぶんの力で「変身」する  1/3

しおりん

明治学院大学文学部芸術学科2008年度入学、長谷川ゼミ3期生。
卒業論文のテーマは『「王子様」とはだれか──『セーラームーン』の構造分析』。
卒業後は印刷会社に就職。
その後転職し、現在は事務職に就いている。

 

 転職してから2年

 大学を卒業して約2年半、いま私はプリンターの部品メーカーで事務契約社員として働いている。一度仕事を辞め、現在のこの仕事に就いてもうすぐ2年が経つ。立ち止まって考えるというこのコラムのコンセプトにならって、いま現在の私が考えることを書き記しておきたいと思う。

 

 楽しい趣味 / つらい仕事

 大学を卒業して最初に勤務した会社は、スーパーマーケットのチラシを作成する会社であった。営業部だった私の仕事は主に校正作業で、じぶんの担当するスーパーのバイヤーから送られてくる商品の売価の書かれた表と、社内で作成したチラシの写真や文字、金額が合っているかどうかを一字一句確認するというような、とても時間のかかる作業だ。 商品のパッケージは短期間で細かに変わるので、古いパッケージの写真を使用しては実際に売られているものとの相違が出てしまう。すると新しいパッケージの写真を撮影する必要が出てくる。当時まだペーパードライバーであった私一人で社用車を運転して、近所のスーパーへ商品を探しに行かなければならない時もあった。スーパーのチラシは毎週配布されるので、数週先のものを同時に進めていかなければならない。ひとつのチラシを作り終えれば、またすぐ次のチラシの締め切りが迫ってくる。常に時間に追われ、日付が変わって帰宅することも珍しくなかった。また、私は営業部で唯一の新入社員であったため、毎日朝一に出社し、フロアの掃除をしたり、かかってくる電話をほとんど1人で受けたりしなければならなかった。

 じぶんの時間が取れず、思うようにできない仕事に行きたくなくなり、休日は少しでも仕事のことを忘れようと買い物や友人と遊ぶことに没頭した。しかし、こうした趣味の時間はあっという間に終わってしまう。休日をたのしみつつも、これが終わればまたしばらく忙しくつらい仕事の日々が続くのだという思いが常によぎり、楽しい趣味の時間と、じぶんの思いどおりにいかない仕事とのギャップに悩まされ続けていた。その不安を上司に打ち明けてみても「自分の趣味なんて仕事に必要ないでしょ?」と言われてしまい、最後までこの仕事にたいして積極的になることができなかった。胃腸炎をおこし会社を休んでしまったことをきっかけに、これ以上は続けることができないと判断し、半年もせずこの会社を退社してしまった。

 退職してしばらくは、車でふらっと出かけてみたり、絵を描いてみたり、これまでにできなかったことを思う存分にたのしんだ。しかし日が経つにつれ、今度は、両親や友人が働いているなか、じぶん一人だけ何もせずにいることが申し訳なく思えてきた。このままではいけないと焦りを感じ、再就職へ踏み切った。退職してから2か月ほどで就職した今の会社は、ありがたいことに前の会社ほど残業はなく、じぶんの時間がもてるところであった。一度仕事を辞めたということもあり、仕事に臨むということにたいして気が楽になっていたというのもあるだろう。しかし、じぶんの時間があるにもかかわらず、以前のように「楽しい趣味の時間」に没頭することにたいする不安は拭えないままだった。

2へつづく     

じぶんの力で「変身」する
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