東京貼り紙マップ—舞浜編—

[ フィールドワークまとめレポート ]


舞浜駅南口前手すりエリア

【A,D班】
【メンバー】<もこ><あっこ><シャンクス><まゆゆ>
範囲:舞浜駅南口前陸橋の柵

【描写】
 舞浜駅南口歩道橋の柵を調査した。ここでは橋に沿っている両端の柵の名称を「ディズニーランド側」、「舞浜駅側」とする。

写真A1
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オレンジ色=舞浜駅側
黄色=ディズニーランド側

写真A2
< a-image002
 下の写真のように、ディズニーランド側の柵を支柱1本とその右側のフェンス1枚で1スロットとし116のスロットにわけた。
 それらのスロットごとに落書きや貼られているシールを見ていった。
スロットは西から1番とし、東へ向かって最後のスロットを116番とした。
 見つけた落書きはほとんど引っ掻いて書かれた落書きだったが、中にはマジックペンで書かれた落書きもあった。
また、シールが8枚、ガムテープが3枚あったが、貼り紙と看板はなかった。
落書きやシールがあったのは、手すりや支柱上部もしくはその側面が主だった。
ディズニーランド側の柵にある落書きのほとんどは、1番から70番までの駅前近くのスロットに集中しており、70番以降はほとんど見られなくなった。
 落書きに多かった内容は、名前や日付、相合傘やハート、恋愛絡みの告白文、どこから来たのかなど自分の身元を明かす言葉、「○○参上」など自分がここに来たということを示す言葉などであった。
漢字よりもローマ字や平仮名で書かれたものが多く、中には韓国語の落書きもあった。
 引っかき傷は、角度や日の当たり具合によって写真に写りづらかった。そのため、記録した写真に写らない傷も多くあった。


【まとめ】
 この調査範囲内で、落書きが集中していたのは、イクスピアリ(註1) 方面から駅前へ向かう1番から70番までのスロットであった。
また私たちが調査している間も、この1番から70番までのスロットが対応する歩道を使って駅からイクスピアリへ向かう人たちが頻繁に行き通っていたため、駅からディズニーリゾートラインの駅へ向かう人の導線となっていることが伺えた。
それに対し、ディズニーランド方面へつながる71番以降のスロットに対応している歩道は人通りが少なかった。
このことから、A,D班担当エリア内の落書きは、人通りが多く、人目に触れやすい場所に書きこまれていく特徴を持っていると考えた。
また、1スロットの柵内でも落書きが多い箇所と少ない個所があった。
柱や手すりには落書きの数が多いのに比べ、格子の内側には落書きが見られなかった。
つまり、集中している箇所の中でも、前者のように落書きがしやすく同時に目に入りやすい箇所、後者のように落書きがしにくい箇所があることが分かった。
以上のことをここでは落書きが書き込まれる場所的要因と捉えてみた。

 落書きの内容については【参上系】、【恋愛系】、【猥褻系】の3つに分類してみた。
【参上系】とは、「~参上」と書き手の名前を自ら名乗っているものや、ただ名前を記したものや訪れたであろう日付の落書きである。
【恋愛系】とは相合傘で男女の名前がセットで記されているものや、カップルたち自身が了解している記念日などの落書き である。
【猥褻系】は女性の裸体や男性器などの落書きであるが、これは数が少なかった。
 これらの落書きがなぜ書かれたのかを考察すると、【参上系】については、「自分がディズニーリゾートという特別な場所に来た」ことを落書きすることで主張し、また書き手自身も実感したいがために書いたのではないかと考えた。
【恋愛系】は、カップルが自分たちの名前を同じ個所に書き込むことで自分たちのカップルという関係を確かめ、その関係を継続したい気持ちから書いたと思った。
またこのように推測されるカップルたちの行為は、ディズニーリゾートはカップルのデートスポットであるというある種のテンプレートを克明に表しているのではないだろうか。
【猥褻系】は猥褻な言葉や絵を落書きすることが、隠すべきものを曝け出すことの快感につながるのではないかと考えた。以上を落書きが書き込まれる感情的要因だと考えた。
 ここで内容を3つに分けてきたが、【参上系】と【恋愛系】はディズニーリゾートという特別な場所に訪れたことと深く関係していると考える。
しかし、【猥褻系】は場所というよりも、書くことそれ自体により快感を得るという意味で、落書きすること自体に意味があると考えられる。
ただし、ここでは【猥褻系】はあくまでも分類であり、これのみからこのエリアの落書きの考察をまとめるには根拠が薄いと考える。
これはこのあとで注目する管理・統制における落書きの原因を探る上で重要な点として考えられるのではないか。

 ここまでで落書きの原因を場所的要因と感情的要因に分けて考えてきたが、「ディズニーリゾート」という場所に注目し、A,D班担当エリアの「空中歩道」と、担当範囲のエリア外である「舞浜駅」をディズニーリゾートの内部と外部をつなぐ出入口と考えて、その出入口に落書きがあることはどういうことなのか、考えてみた。
 まず、出入口という様相を捉えるために踏まえておくべきこととして、舞浜駅の落書きに言及している『アトラクションの日常―踊る機械と身体』(長谷川一/2009/河出書房新社)では、管理・統制された空間の強制力が弱まる場所での書き込みは、夢の空間での1つの綻びであると捉えている点をここで挙げる。
同書が述べている管理・統制とは、ディズニーリゾートが来客に「叶える」という形で提供している「夢」を壊すようなもの、ゴミや落書きを排除する働きである。
また、「夢」を壊す可能性のある人間のふるまいも排除の対象であることが、ディズニーリゾート公式ホームページ(東京ディズニーリゾート公式ホームページ )に掲載されている「皆様の笑顔と安全のために」というパーク内におけるルールを喚起するページにて、確認することができる。
つまりここでは、ディズニーリゾートマップ(註2)が指定するリゾート内にある2つのパークが管理・統制が働く内部であり、対する外部とは、その管理・統制の働きが全く及ばない場所すべてを含んでいる。
 以上で挙げた点を踏まえて舞浜駅と空中歩道をみてみると、まずこの空間は完全なる外部ではないと考えた。
それは、舞浜駅にあるディズニーの物語を匂わせるような、装飾された時計や、ディズニーリゾートに通ずる南口改札抜けたところのスピーカーから流れている、ディズニーのアニメーション映画で馴染みがある曲から推測した。
つまりディズニーリゾートマップが示しているように舞浜駅とその南口にある空中歩道を含む空間は完全にパークと分断された場所ではないことが伺える。しかし、落書きや貼り紙その他ガムテープの存在が証明しているように、管理・統制の働きが弱い空間であることから、この空間は内部には含まれない。
これらのことから、この出入口という空間は内部と外部が入り混じった空間であると考えた。
 よって、管理・統制の働きが弱まる空中歩道に落書きをする行為は、徹底した管理・統制から「私がいた痕跡」を残す隙さえ来客に与えない東京ディズニーリゾートに対する反発であると私たちは捉えた。
この反発において重要なことは、先ほど述べた【猥褻系】がディズニーリゾートという場所とは関係のない個人的な感情から落書きされたものであることから書くことそれ自体に落書きの原因をみようとしたことと通じている。
「私がいた痕跡」を残すことができる出入口に落書き行為をすることは、痕跡を残すことが動機とも言えるが、それは目に見えない管理・統制の働きと落書きを行う人との関係が目に見えるものとして表れているとも捉えられる。
つまり、出入口における落書きにおいて重要なことは場所・感情よりも落書きを書くことそれ自体に注目することであり、その行為の痕跡を辿ることで目に見えない管理・統制の働きが浮かび上がるのではないだろうか。

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註1 イクスピアリ……株式会社イクスピアリが経営、株式会社オリエンタルランドが全額出資している、舞浜駅前にあるショッピングセンター。コンセプトは「物語とエンターテイメントにあふれる街」(URL: イクスピアリ公式ホームページ )
註2 ディズニーリゾートマップ……東京ディズニーリゾート公式ホームページから以下の画像が配信されている。(URL: ディズニーリゾートマップ )

写真A3

a-image003 ※かなり画質が荒くなっています


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舞浜駅南口バスロータリーエリア

【B班】
【メンバー】<くぼっち><セニョール>
範囲:(南口下~バスロータリー)

【描写】
 B班は、舞浜駅南口下のバスロータリー付近を調査した。調査範囲は、ディズニーのお土産ショップ・ボンヴォヤージュ(註1)の高架下にある交番のあたりから、バスロータリーを経由して駅下の広場を見た後、お土産ショップ・ボンヴォヤージュの反対側に位置しているショッピングモール・イクスピアリ(註2)前までという流れで見て回った。
しかし、バスロータリーの柱に貼ってある番号の貼り紙を逐一記録するなど優先順位を決めずに行動していため、時間がなくなってしまい、駅下の広場にある全ての落書きや貼り紙などを調査することができなかった。
 このように調査はしきれなかったものの、駅下の広場にあった柱のほとんどに数枚ずつ「NO SMOKING」「NO JAPAN」と黒字で書かれたピンク色のテープ(写真B1)が貼られているのが見つかり、それが一番印象的だった。
駅下では他に、マジックペンでの落書きやディズニーのお土産ショップの袋を止めるテープやバーコードのシール(写真B2)などもあった。
 また、バスロータリーには東日本大震災の影響による液状化現象により地形が変化し、柱が浮き出てしまっていた場所もあり、その修正工事のためなのか、柱番号や「設計天」(意味はわからず。何かの略?)などと書かれたテープ(写真B3)も多く見受けられた。

写真B1
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写真B2
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写真B3
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【まとめ】
 まず、全体を通して目立ったのが「NO SMOKING」「NO JAPAN」と黒のマジックによって手書きで書かれたピンク色のテープである。(写真1参照)
写真には一つしかテープはないが、他の柱ではそれらが隣り合って貼られているところも見受けられた。
これらが貼ってある位置はどれも手を伸ばしても届かない高さ(地面からおそらく2メートル後半ほどは離れている)であり、貼るために脚立などが必要となりそうだった。
さらにその貼り方は丁寧であり、どのテープも柱のタイルに沿って平行に貼られていた。
また、他にも「神係」「BNE」という私たちの担当していないA、C、D班のエリアでも見られたステッカーが貼ってあった。
「NO SMOKING」や「神係」などについてはそれらを作製したり、高いところに貼るために脚立を持ってきたりと、予め準備してきた上で貼ったものなのではないかと思う。
 私たちは以上の貼り紙には何かしらメッセージのようなものがあるのではと考える。
「NO SMOKING」のテープを例にみると、これだけであれば「禁煙」という意味であり、嫌煙家が貼り付けたものであるかも知れないと思う。
だが「NO SMOKING」「NO JAPAN」という組み合わせでみると、「喫煙なくして、日本無し」という意味になり、喫煙を推奨するような文言になる。
テープの貼り方の連続性があるのかが分かりにくかったため、貼り付けた人物がどのような意図があったかまでは分からなかった。
しかし、柱一つにつきテープは2~3枚貼り付けられていて、それが沢山の柱に見られたので、貼り付けた人物は何か伝えようとしていたのではないかと考えられる。
 その一方で、商品のバーコード(写真2参照)やディズニーのお土産ショップの袋を止める青いテープといった、元々何かにくっついていたものを剥がして、柱に貼り付けたようなものも見つけた。
先述した「NO SMOKING」「NO JAPAN」のテープと比較すると、バーコードやディズニーのお土産ショップの袋を止める青いテープには、あまり意図やメッセージはないように見受けられ、近くに柱などがあったから衝動的に貼ったのではないかと考える。
 また、南口下からバスロータリーの範囲では他に工事のために必要な貼り紙や看板もあった。
この付近は2011年の3月に発生した東日本大震災の爪痕が、発生から2年半経ってもいまだに残されており、そのための工事がやっと行われているのだと思った。
 全体的に見てみると南口下からバスロータリーの範囲には、落書きや貼り紙の種類や内容がバラバラであった。
また、A班やD班が担当した舞浜駅南口の手すりは明らかにディズニーリゾートに遊びに来た人が書いたような落書きが多かったのに対して、こちらのエリアはそのような人たちが記したものではなさそうな落書きが殆どであった。
私たちが見る限りディズニーリゾートからバスロータリーに向かう人は、駅に向かう人よりも多くなかったように見えた。またバスロータリー内のバス停はいくつかあり、その行先はディズニーリゾートだけではない(註3)ため、バスの利用者はディズニーリゾートに向かうためにというよりも、生活圏内や職場など日常的に行く場所へ移動するために使っているのではないかと考えた。
そのため、落書きや貼り紙にも、ディズニーリゾートに来た記念のようなものがあまり無かったのだと考えた。

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註1 ボン・ヴォヤージュ…東京ディズニーリゾート内にある日本最大級のディズニーショップ(URL : ボン・ヴォヤージュ公式ホームページ)
註2 イクスピアリ…株式会社イクスピアリが経営、株式会社オリエンタルランドが全額出資している、舞浜駅前にあるショッピングセンター。コンセプトは「物語とエンターテイメントにあふれる街」(URL: イクスピアリ公式ホームページ)
註3 東京ベイシティバス、舞浜駅行先一覧 (URL : 東京ベイシティバス 舞浜駅行先一覧)


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舞浜駅北口エリア


【C班】
【メンバー】<なっつ><サラダ>
範囲:北口~歩道橋(住宅街まで)

【描写】
 C班は舞浜駅北口の空中歩道とその高架下を調べた。
高架下のコンクリートの地面には道路工事の印のようなものがたくさんあり、東日本大震災の影響で液状化した地面を工事した際の印なのではないかと思った。
落書きや張り紙は、南口側のエリアより比較的少なかったが、看板やステッカーをはがした跡に重ねてスプレーやマジックを使って描かれていることが多かった。(写真C1)
なかでも印象的だったのは、室外機を囲っている柵にたまった埃をふきとって(写真C2)絵や文字を表現している落書きだ。
描かれていたのは、市松模様やアルファベット、女性の裸体など様々だった。(写真C3)
また、高架下の近くには駐輪場があり、「自転車・原付バイク放置禁止」の看板(写真C4)が多くみられた。
 空中歩道の落書きや貼り紙も、南口側のエリアより少なかった。
空中歩道の駅側に近いほうの両端の柵は、A・D班が担当した南口にある柵と形状や素材がまったく同じものであった。(写真C5)
しかし、南口の柵はたくさんの落書きで埋め尽くされていたのに比べ、北口側の空中歩道の柵には全く落書きがなかった。
 また、空中歩道を調査中に60代くらいの男性に話しかけられた。
その男性が言うには、高架下にある駐輪場と空中歩道がスロープでつながっているため、下から自転車に乗って上がってくる人と、空中歩道を歩く歩行者が合流する地点でぶつかりそうになり、危険であるということだった。
そのためか、空中歩道では自転車を降りるように促す標識(写真C6)や、道を二分して歩行者と自転車を利用する人を分けるような看板(写真C7)がいくつかみられた。
だがその標識や看板があっても、実際はそこに表記されている通りのことが守られていない様子であり、自転車に乗車したまま空中歩道を渡る人が多くみられた。


写真C1
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写真C2
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写真C3
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写真C4
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写真C5
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写真C6
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写真C7
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【まとめ】
 私たちC班が調査した北口側は、全体的に落書きや貼り紙は少なく、整備された印象だった。
ディズニーリゾートがある南口の手すりと全く同じ手すりが北口にもあったが、ディズニーリゾート側とは打って変わってほとんど落書きが見られなかった。
やはり南口は東京ディズニーリゾートがありその訪問客で賑わうため、思い出を残すための落書きが多く残されるのに対し、北口は住宅地になっており住民が日常的に利用する場合が多いため、落書きが少ないのだろうと思った。
しかし、C班が調査した範囲で1か所、派手な落書きを見つけた(写真C3)。
それは室外機を囲っている柵にたまっている埃をふきとって描かれたものだ(写真C2)。
この室外機の囲いが、C班担当の範囲内で1番汚い場所であった。汚い場所だからこそ、落書きした人は、最初から汚れている場所ならばよいだろうと罪悪感が薄れて気が緩み、落書きしてしまったのだろうか。
また、埃をふきとって描くという技法に楽しみを感じていたのかもしれない。
それは、曇った窓ガラスに指をすべらせることで線を描くときのような快感だったのだろう。
つまり、この場所に落書きがなされたのは、埃のたまった汚い場所であるということと、落書きすること自体に楽しみがあったから、という二つの理由によるのではないかと考える。
 この落書きは、かなり大きく描かれていて、囲いになっているすべての柵に何かしらの図柄が描かれていた。
おそらく、その場所を通る歩行者の目をひくものになっているだろう。
このことから、落書きをした人は、自分が描いたものを多くの人に見てほしいという欲求を持っているのではないかと考えた。


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舞浜駅南口エリア


【E班】
【メンバー】<きぬ><じーや>
範囲:舞浜駅(南口駅前)

【描写】
 E班は、主に舞浜南口駅前と、駅からショッピングモール「イクスピアリ 」まで、そしてディズニーランドに行く途中にあるお土産ショップ「ボン・ヴォヤージュ 」までの道のりを調査していった。
 南口駅前には、主に落書きが見られた。
看板に関してはほとんどが駅周辺の案内板のようなものであった。
その為、あまり調査の対象としていたオフィシャルでない貼り紙や看板は見つからなかった。
時折、階段に「ここに座らないでください」や「やめよう歩きたばこ」など、注意を促す貼り紙を発見した。
また、駅前のテレフォンボックスにはシールや落書きが見られた。
 落書きが一番多く見受けられたのは柵だ。
駅からディズニーランドへと向かう橋の入口付近には銀色の柵があるのだが、そこには削って痕を付けたような落書きがたくさん見られた。
しかし、橋の入口付近を越えると、この柵は緑色に変わっていた。緑色の柵にはまったく落書きがされておらず、よく見たり触ったりしてみると落書きがしづらいような削りにくい素材になっていることがわかった。



写真E1
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 ここからディズニーランドに向かうまでの道のりには、この緑色の柵が続いている。
ディズニーランドへと近づくにつれて柵の落書きがなくなっただけに関わらず、南口駅付近に見られたような貼り紙やシールなども見られなくなる。
そのようなものが貼られても、誰かがすぐに剥がすようにしているのかもしれない。
それくらい、景観全体が綺麗に整えられていた。
イクスピアリ側も、柵に貼ってあったステッカー以外は調査の対象となるものはあまり見られなかった。
ディズニーランド側と同じように、こちらも整備されているように見えた。


  【まとめ】
 私たちの担当エリアは、舞浜駅南口周辺、イクスピアリ側、ボン・ヴォヤージュ側の3つのエリアがあったが、その配置を表すと写真E2のようにイクスピアリ側とボン・ヴォヤージュ側の間に位置するのが南口駅周辺という配置になっている。

写真E2
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 この3エリアを見て感じたことは、やはりイクスピアリとボン・ヴォヤージュ付近というのは、その間に位置する駅周辺と比べて景観が綺麗に見えるよう整備されているということだ。落書きや、シールなどの今回調査対象となっている貼り紙が見つからないのはもちろん、汚れさえ見当たらなかった。逆に、駅周辺は鳥のフンが多数落ちている場所があったり、手すりにはA、D班が担当した部分と同じような傷をつけて書かれた落書きも多く見られたりした。
 また、それに反してイクスピアリに入る入口や、ボン・ヴォヤージュに向かうまでの橋の入口では、駅とははっきり区別された「清潔感」が保たれているように感じた。そのような区別は、東京ディズニーランドに近づくにつれてより色濃くなっているように感じた。
 その区別をもっとも明確に表していたのが、手すりの柵の素材が駅周辺からボン・ヴォヤージュに向かう橋に入る過程で変わっていることだ(写真E1参照)。駅周辺の手すりは、主に引っかき傷によってされる落書きが多い。しかし、この橋の手すりは引っかき傷をつけることのできない素材になっていた。実際に少しだけ削ってみようと試みたが、傷も付かなかった。
 また、シールなどの貼り紙も見られなかったことから、もしこの柵に貼られたとしても清掃員がすぐに除去していると予想される。このことからも、やはり「駅周辺」と「東京ディズニーランド付近」という区別が、舞浜駅周辺のこの3エリアのみにおいてもはっきりと見えたのが興味深かった。
 おそらく舞浜駅周辺は、東京ディズニーリゾートに訪れる人と、舞浜にもともと住んでおり別の場所へと向かう人が混在している。それに対して、ボン・ヴォヤージュ付近やイクスピアリ付近というのは、訪れる人の目的が東京ディズニーリゾートやイクスピアリであることがはっきりしている。その為、ボン・ヴォヤージュ付近やイクスピアリ付近では、訪れる「お客様」をもてなす意味での丁寧な清掃が心がけられているのではないだろうか。
 ディズニーランドがある、舞浜ならではの特徴を見たように思う。

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註1 イクスピアリ…株式会社イクスピアリが経営、株式会社オリエンタルランドが全額出資している、舞浜駅前にあるショッピングセンター。コンセプトは「物語とエンターテイメントにあふれる街」(URL: イクスピアリ公式ホームページ)
註2 ボン・ヴォヤージュ…東京ディズニーリゾート内にある日本最大級のディズニーショップ(URL : ボン・ヴォヤージュ公式ホームページ)

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【全体のまとめ】
 全体を通して見ると、特に落書きが多かったのは「舞浜駅南口前手すりエリア」、特に貼り紙が多かったのは「舞浜駅南口バスロータリーエリア」である。反対に「舞浜駅南口エリア」「舞浜駅北口エリア」は、この2つのエリアと比べると落書きや貼り紙が少なかった。それを図る例として手すりを挙げたい。「舞浜駅南口前手すりエリア」と「舞浜駅北口エリア」にあった手すりは、まったく同じ素材や形状であった。しかし「舞浜駅南口前手すりエリア」の手すりにはびっしりと落書きがされていたのにも関わらず、「舞浜駅北口エリア」では打って変わってほとんど落書きが見られなかった。また、「舞浜駅南口エリア」では落書きの出来ない素材の手すりに変わっているところも見られ、そこには一切落書きが見られなかった。
 このように調査結果をまとめると、東京ディズニーリゾート、大型ショッピングモール「イクスピアリ」などに近い「舞浜駅南口エリア」と、住宅地に近い「舞浜駅北口エリア」には落書きや貼り紙は少なく、「舞浜駅南口前手すりエリア」や「舞浜駅南口バスロータリーエリア」には落書きや貼り紙が多く見られたことがわかる。また「舞浜駅南口前手すりエリア」では、「~参上」などといった東京ディズニーリゾートに訪れた人が思い出として書いたと思われる落書きが多かったのに対して、「舞浜駅北口エリア」にはそのようなものは見当たらず、「自転車・原付バイク放置禁止」などといった住民に向けての標識が多く見られた。また、それぞれのエリアの落書きや貼り紙の特徴を通してみても、「舞浜駅南口前手すりエリア」が東京ディズニーリゾートの訪問客から目に付きやすい場所であるのに対して、「舞浜駅北口エリア」は東京ディズニーリゾートへの訪問を目的として舞浜駅に訪れる人があまり行かない場所であることが改めてわかる。  また、「舞浜駅南口バスロータリーエリア」に来るバスには、ディズニーリゾートやホテルに向かうバスもあれば、別の駅に向かうようなバスもある。つまり、このエリアにはバスを利用して東京ディズニーリゾートに訪れる目的で来る人と、もともと舞浜に住んでおりここからバスで別の場所へと移動する人の双方が混在していることがわかる。そのために、調査結果として貼られた経緯や理由が異なると思われる貼り紙が多いと感じられたのではないだろうか。
 「舞浜駅南口前エリア」は、調査の対象である非公式の貼り紙や落書きはあまり見られなかったのが特徴的である。このエリアは舞浜駅南口を出てすぐに広がる空間であると共に、ディズニーリゾートへ向かう橋や、大型ショッピングモール「イクスピアリ」への入り口でもあって、とにかく人の出入りの多いエリアである。そのため、東京ディズニーリゾートやイクスピアリの公式の看板や、舞浜駅近辺の案内板など、公式の貼り紙が多く見られた。
 エリアごとにわけて整理してみると、そこに訪れると考えられる人々の目的によって貼り紙や落書きの特徴が変わっているように思う。この舞浜駅周辺という小さなエリアでも、目的によって様々な特徴を見ることができた。

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