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vol. 5 核家族──引っ越してからの近況 1/2

いつき

明治学院大学文学部芸術学科2006年度入学、長谷川ゼミ1期生。卒業論文のテーマは『新宗教のメディア活用──「幸福の科学」を事例に』。卒業後は結婚、出産し、現在は一児の母として生活している。

結婚、出産、引っ越し

 私は、大学を卒業してすぐに結婚し、翌年には妊娠、出産を経て現在一児の母として生活している。一期生ということもあり、長谷川ゼミOGでは一番家庭に入るのが早かったメンバーではないだろうか。

 産後二年間、主人の実家での同居生活は非常に心強く楽しい日々だった。引っ越して核家族になることは本当に不安だった。しかし主人の仕事がどんどん忙しくなってきたので、なるべく近場に引っ越すことで通勤時間を少しでも減らそうということになった。主人と、3歳になる娘、そして妊娠前から飼っている猫も一緒に、埼玉のアパートへ移り住んだ。今年の2月だった。

 今回は引っ越してからの近況をゆるく語ってみようと思う。

母親であること

 私には少し歳の離れた妹や弟がいる。幼い頃から母に頼まれれば彼らのオムツを替えたり寝かしつけたりと、自分なりに世話を焼いていたつもりだった。遊び相手になることが全く苦ではなかった。自分は絶対に母親に向いているし、産んだらその子のことだけ一日中考えていられると思っていた。

 けれどそこは産んでみないとわからないものだ。実際に母親になると目先の雑務や考え事に気が散る。子供のことだけに集中することができない。日中娘と過ごしながらも、育児よりむしろ、それ以外の自分の今後のライフワークをどう定めるか気にしていることが多いかも知れない。パートに行くべきか。資格を取るべきか。就職するべきか。私は日常的に絵を中心に作品を作っている。続けていくならいつまでも趣味の延長ですと言って濁しているわけにはいかないと思う。出来るだけたくさん描いていきたい。しかし生活に支障がでるのはまずい。心配は尽きない。

 子育ての理想像はいくらでもある。全然できていないと思う毎日だ。私は母親面をするにはあまりにも幼くて自分本位ではないかなと不安になる。しかし、子供は子供で、私の頭でっかちな心配事なんておかまいなしに、全力でぶつかってくるので驚く。とにかくやりたいことを貫こうとする。一度娘にスイッチが入ればそれに合わせてこちらも本気で相手をせざるを得ないのだ。大変だけど、頼もしいと思う。全部が親に委ねられていて、一方的に子供に我慢させてしまうようなことは、基本的にはあまりないように思う。こちらから働きかけなくても、娘は生まれてすぐに一つの人格、個性を持っている。沸いてくる欲求にちゃんと正直に突き進んでいる。時間、体力、金銭面と限りがあるので全ての要求には答えられないが、ここぞという瞬間を見抜いて、サポートできるような存在になりたいと思う。それが出来ればきっと大丈夫だ。

夫婦のこと

 私と主人はよく、身内や友人や知り合いから、「仲が良いね」と言われる。確かに、喧嘩らしい喧嘩はほとんどないし、二人だけで何時間でもしゃべっていられる。でも自慢できることでもない。私達が仲が良いのは、おそらくきっと、二人で人の悪口ばかり言っているせいだからだ。悪口というほど悪意のあるものでもないが、とにかく物事を斜めから見たがる性格が共通している。そうして学生時代に付き合い出してからずっと、何でも話し合い、敵を外に仮定し、お互いだけを認めることでなんとか自尊心を保ってきた。その延長に自然と結婚があった。お互いを切り離してしまったら四面楚歌なのだ。

 私は絵を描いていると言ったが、主人は日常的に文章を書いている。考え方に共通点があるので、二人でひとつのユニットとして作品を発表していこうと言っている。平日は主人は仕事、私は家のことに追われ、休日は交代で娘の相手をするだけで手一杯だが、相手が創作の波に乗っているときは時間を作ってあげられるよう気遣い合っている。来年あたりはお互いが研いできたものをうまく使って、発表の場を設けたいね、見た人に一刺ししたいものだねと力を溜めている。結婚は「共謀」みたいだなと思う。

核家族──引っ越してからの近況
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