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1班2班3班4班5班全体

1班

メンバー:<長谷川先生><もこ>
ターゲット:中高年

  今回のフィールドワークで、私たち1班は中高年のカップルをターゲットに調査をした。私たちの班は途中で見失うなどして中断することなく、一貫して1組のターゲットを調査することができた。 ターゲットは男女とも50代後半で、見た感じでは東京ディズニーランドやシーといったテーマパークに不慣れな様子だった。実際に調査してみても、彼らはマップを道の真ん中で広げたり、それを見かねたキャストに声をかけられていたり、キャストに質問することが多く、慣れていないようだった。
 服装は男性がネクタイをしめ、上着は黒のダウン、グレーのスラックスを履いており、男性はバッグを持っていなかった。女性はグレーのニットに上着は黒のファージャケット、黒のスカートにハンドバッグを持っていた。両者とも服装は普通の外向けの服装であり、ディズニーキャラクターが描かれている服装や持ち物を全くと言っていい程身に着けていなかった。また、余談だが男性も女性も携帯はスマートフォンではなく、フィーチャーフォンであった。

 ターゲットの行動の特徴を挙げていく。彼らは移動時、いかなるときも常にお互いの腕を組んで歩いていた。歩くペースは特に早くもなく遅くもなく一定のペースであった。途中で走ったりすることもなかった。パーク内を歩いている時は、きょろきょろ周りを観察し、気になったところを指差しながら、世間話をしているようであった。その様子からは、まるで家の近所を散歩しているかのように、穏やかで仲睦まじい印象を受けた。キャラクターの着ぐるみと遭遇しても、そちらには見向きをせず、パーク内をきょろきょろし歩いていた。また立ち位置は男性が右側、女性が左側であることが多かった。カップルの力関係を探る心理テストに以下のようなものがある(註1)。精神的に相手をリードしたい人は自然と右に立ち、相手を信頼し自分を預けたい人は左側に立ちたがるという。このカップルは、女性よりも男性がリードする立場なのかもしれない。またレストランに入った時も、女性が席に座って携帯で電話して待っている間、男性は進んでドリンクを注文するため列に並んでいた。トイレは男性より女性の方が頻繁に行っていた。女性がトイレに入っている間、男性は携帯で誰かに電話しているようだった。両者は空き時間にお互い誰かと電話していたということになる。また一度も写真を撮る動作はなく、風景写真も2ショット写真も撮っている様子はみられなかった。

 次はエリアの行動パターンについて述べる。Targetページのマップをみると分かるが、初めに【メディテレーニアンハーバー】から入り【アメリカンウォーターフロント】に抜けている。それから、【ポートディスカバリー】、【ロストリバーデルタ】、【アラビアンコースト】へと行き外周をまわった。それから【マーメイドラグーン】、【ミステリアスアイランド】に入り、パークの内周へと入った。このカップルが一番多く回っていたのは【ミステリアスアイランド】、【ポートディスカバリー】、【マーメイドラグーン】、【ロストリバーデルタ】だ。後半はこの4つのエリアをぐるぐるとまわっていた。初めはマップを見て常に移動していたが、後半になるとマップを見ることはほとんどなくなり、道に迷うこともなくなった。
 アトラクションに乗っている際は、常に笑顔だった。どのアトラクションでもオーバーなリアクションはせず、笑顔で周囲を眺めていた。女性が時折、気になったものに指を指しながら、男性の腕を掴み笑顔で話しかけている様子も見られた。絶叫系アトラクションである『レイジングスピリッツ』でも、特に叫び声をあげている様子は見られなかった。アトラクションが終わると、すぐに元のように腕を組み直していたのが印象的であった。
 最初のうちは乗りたいアトラクションは全て運休だったり、待ち時間が長かったりしたため、断念することも多く、そこまでアトラクションに執着はないのか、と思った。しかし11時43分にアトラクション『レイジングスピリッツ』のファストパスをとってから、続けて2つのアトラクション『ジャスミンのフライングカーペット』、『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』と2つのアトラクションに乗った。どうやらアトラクションにも興味があるようだった。特に執着していたように見えたアトラクションは『ミスティックリズム』というショーであった。このアトラクションに関しては、ショーの看板近くのキャストに公演時間を3回ほど確認していた。そして16時45分に17時5分の回の『ミスティックリズム』の列に並んだのを確認して私たちの調査は終了した。

 今回私たち1班が調査対象とした中高年のカップルは、常にお互いに腕を組んで歩いており、とても仲睦まじい様子だった。しかし、トイレやレストランなどで男女とも相手がいない間に、誰かに電話しているなど、怪しい行動も見られ、夫婦には思えなかった。男女二人の間に何か秘密があるのかもしれない。また、東京ディズニーシーでは多くの若いカップルがお互いの写真や2ショット写真、風景写真を撮っている中、今回のターゲットである中高年のカップルは調査時間内にそういった写真を撮っている様子は見られなかった。私は若いカップルが写真を撮っているのを見て、彼らは東京ディズニーシーへ2人で一緒に行ったという事実を写真として残すことで、2人の関係を構築しているように思えた。一方、今回調査対象とした中高年カップルは写真という助けをかりなくても、その仲睦まじい様子から、すでに2人の関係は構築されているように思えた。

(註1)出典:『月華繚乱ROMANCE』(Rejet×オトメイト、2011)











2班
メンバー:<まゆゆ><あっこ>
ターゲット:社会人のカップル

 私たちが調査したターゲットは全2組で、いずれも見た目による年齢から「社会人カップル」と判断した上でターゲットとして選定した。
 1組目は男性女性両方の見た目から「社会人カップル」だと判断した。男性の服装は全体的に黒っぽい色で統一されており、短い髪は全体的にワックスで固められオールバックになっていた。少々色黒で体格が良いように思える。また香水をつけているようだった。
 女性の服装は白いスキニーパンツを履いており、黒いコートをはおっている。ショルダーバックを片方の肩から下げ、8cmくらいのヒール靴を履いている。髪の毛は茶髪の肩甲骨下ぐらいまであるロングで、毛先がパーマかアイロンで巻かれていた。女性もまた香水の香りがした。
 2組目は男性の見た目を基準に「社会人カップル」だと判断した。男性の服装はカーキ色のダウンジャケットをはおり、ボトムはジーンズを履いている。スニーカーを履き、ショルダーバックと相手の女性の持ち物であろうドナルドの顔が全面に描かれたトートバックを持っていた。そして大きいデジタル一眼レフを首から下げている。
 女性の服装は白いコートをはおり、ボトムには淡い緑のパニエが中に入った生地が三層になっている膝上丈のスカートをはいていた。頭にはリボン、星型のモチーフ、透明のプラバンでできたトナカイのような角がセットになったカチューシャをつけている。そして青紫のような色をしたタイツを履き、ヒールのない靴を履いていた。

 まず、1組目を調査していて抱いた印象は、東京ディズニーシーという場所に限って特別なことはしていない、ということである。彼らは、アトラクションに搭乗するために順番待ちの列に並ぶ間、東京ディズニーシーの地図を広げ、今並んでいるアトラクションに搭乗し終えた後、次にどのアトラクションに乗るか計画を立てていた。このように計画を立てるのは、東京ディズニーシーに訪れた時に限ったことではなく、私たちがあまり慣れない地に訪れた時、スマートフォンでインターネットにつなぎ、現在地を検索することや、あるいはショッピングセンターに訪れたときにフロアガイドの冊子を広げ、行き先を選定する行為となんら変わりはない。しかし、1組目の男性ターゲットは女性との会話の中で、「現実に戻される」という言葉を発していたため、この男性は東京ディズニーシーを「現実とは違う場所」だと認識しているのではないかと考えた。
 しかし2組目のターゲットは、1組目に比べて東京ディズニーリゾートの場所だからこそだと考えられる振る舞いが垣間見られた。このターゲットの際立った特徴として、一眼レフのような大きいデジタルカメラで、男性が女性を撮影している点が挙げられる。
 このカップルは尾行中に男性が女性を被写体として、2つのポイントで撮影をしていた。1つ目のポイントは【アメリカンウォーターフロント】のエリア内にあるアトラクション『トイ・ストーリー・マニア!』付近、2つ目は同エリア内にあるアトラクション『タワー・オブ・テラー』前の広場で行われていたキャラクターのきぐるみとのふれあいにて、である。
 男性が女性を撮影する様子からは、どのようなポーズかは遠目であったため不明瞭だが、男性が身振り手振りで女性にポーズを指示する場面が見受けられた。また、広場で行われていた4つのキャラクターのきぐるみとの振る舞いでは、女性が積極的にキャラクターと接触を試みており、女性はキャラクターと一緒に男性が構えるカメラへ目線を向けポーズをとっていた。男性が女性とキャラクターの2ショットを撮影し終えると、2人はそのキャラクターから離れ、先ほど撮影した写真の写り具合を2人で確認している様子が見受けられた。この様子から、2人にとって女性が被写体の写真を撮る、というイベントは、東京ディズニーシーを訪れる一つの目的となっていることが考えられる。
 しかし、男性は以上の2ポイントにおける彼女を被写体にした撮影のほか、風景のみを撮影する場面も見受けられた。男性が撮影した風景は、【アメリカンウォーターフロント】のエリア内にある、【ポートディズカバリー】のエリア方向に架けられた鉄橋を渡り、アトラクション『ディズニーシー・エレクトリックレールウェイ』の線路が走っている高架下の手前から、水面越しにアトラクション『タワー・オブ・テラー』が見える風景(図1)である。この男性の行動を遠目から確認する限り、女性は男性が撮影する風景の一部にもなっていない。

2-image01
(図1)男性が撮影したであろう風景。写真中央にある背の高い建物が、アトラクション『タワー・オブ・テラー』

 このターゲットの様子から、2つのポイントでは女性と男性はお互いの写真を撮影することで、東京ディズニーシーでの時間を共有していた。一方でカメラの持ち主であろう男性が女性とは関係のない風景を撮影している場面では、カップルとしてではなく、男性が単独で東京ディズニーシーに訪れても成立するような行動で、時間を過ごしていることがわかった。

 ここからは以上の調査における感想を述べる。
 この調査で重要だと感じた点は、調査をする側である私たちの心境の違いである。
 この心境の違いとは、私たちが東京ディズニーシーに娯楽施設として訪れる時と、今回東京ディズニーシーを調査の実行場所として訪れた時を比較したことによる違いである。ターゲットの振る舞いを観察し記録している時、調査をする側の心境としてはターゲットの足取りや振る舞いを見たまま記録することに精一杯で、ある意味娯楽施設として訪れた時のように東京ディズニーシーの空間を「楽しむ」といった心境ではなかった。そのためなのか分からないが、東京ディズニーシーの空間をつくりあげている「アラビア風の建物」「アメリカ風の船」などといったものを、とても「冷めた目」で見ていた。この心境の違いを調査中に自覚した時、「アラビア風の建物」などといったものが、他の遊園地・テーマパークにある施設と変わらない、と思っていた。
 この心境の違いから東京ディズニーシーに対して抱いた「他の遊園地にある施設と変わらない」という印象には、そもそも調査者である私たちの中に東京ディズニーシー含むディズニーリゾートは他の娯楽施設や遊園地とは一線を画している、という思い込みがあったことに気付いた。また、これまで娯楽目的で東京ディズニーリゾートを訪れていたとき、東京ディズニーリゾートを他の遊園地とは別モノ扱いをし、特別視してきたという状況にいたのではないか、と思った。そして今回調査目的として訪れたことで、はじめて東京ディズニーシーという場所を、少し距離を置いて眺められた結果が、「冷めた目」という心境に表れたのだと思う。
 東京ディズニーシーという場所に限って特別なことはしていない、というターゲットに対する印象にも、私たちが今回のフィールドワークを迎えるに当たって、カップルが東京ディズニーシーだからこそするであろう振る舞いを期待していたことが表れている。しかし、期待といっても具体的なカップルの行動を予測していたわけではないが、実際調査を行うと、「東京ディズニーシーだからこその振る舞い」だけが行なわれているとは限らないことがわかった。

 









3班

メンバー:<シャンクス><くぼっち><なっつ>
ターゲット:20代、大学生カップル

 1組目は、20代中盤位のカップルを調査した。黒い上着の男性と茶色いコートの女性だった。男性が、相手の女性の白い鞄を持ってあげていた。この調査は11時から開始したのだが開始して10分程で、『リストランテ・ディ・カナレット』という、高級志向のレストランに入ってしまったため、私たちの金銭的な問題もあり、断念せざるを得なかった。調査した時間は短かったが、途中でターゲットが『ヴェネツィアン・ゴンドラ』のキャストに何か場所を訊ねていたことと、その後すぐにレストランを発見して入店したことから、事前に店を調べて目的をもって来ていたとわかる。

 その後、東京ディズニーシーの入口に戻って新たなターゲットを探した。ターゲットを見失ったり何らかの理由で調査を断念したりした時は、入口で新たなターゲットを見つけることになっていたからである。そこで、ヒョウ柄のマフラーとサングラスをし、グレーのカーディガンを羽織った男性と、全体的に黒い服でコーディネートしている網タイツの女性のカップルを発見し、ターゲットに決めた。年齢は20代前半くらいであった。男性は身長が高く、服装も相まって一見怖そうに見えた。このカップルは11時25分から調査を開始し16時30分まで調査をすることができた。

 彼らの行動の特徴をいくつかあげていく。まず、彼らは絶叫マシーンが好きらしく、乗ったアトラクションは、東京ディズニーシーの中でも人気の『レイジングスピリッツ』と『センター・オブ・ジ・アース』という、絶叫系アトラクションだった。中でも『センター・オブ・ジ・アース』では120分という待ち時間を見て一度断念し、『ストームライダー』のファストパスを取ったものの、結局それを切り捨てて『センター・オブ・ジ・アース』に並んでいた。そして、お土産屋やキャラクター・グリーティングというディズニーキャラクターと記念撮影できる所には一切入らなかった。彼らはディズニーキャラクターのキーホルダーやカチューシャなどのグッズは身につけていなかった。また、脇目も振らず、寄り道もせずに目的地の乗りたいアトラクションまで向かっていた点や、メンテナンスで休止していた『インディー・ジョーンズ・アドベンチャー』には予め運行情報を知っていたかのように見向きもしなかった点から、彼らが東京ディズニーシーに来慣れていたり、事前にどのアトラクションが稼働しているのかもチェックし、計画を立ててパークを回っていたりしているということが窺えた。また、120分待ち、140分待ちのアトラクションに並んで乗っていたが、それらに並んでいる際は、沈黙は殆ど無く、終始楽しそうに談笑したりスキンシップをとったりすることもあった。それから、パーク内を移動する時は常に手をつないでいた。そして常に速足であったが、どちらかが引っ張っていく感じではなく、同じ歩幅で歩いていた。
 はじめに、ターゲットとしてこの2人のカップルを見つけた時は、男性は怖そうに見えたが、彼らの楽しそうに談笑する様子や振る舞いを見ていると、とても微笑ましかった。また、彼らは歩くのがとても速かったため、彼らに私たちの調査が気づかれることよりも、彼らを見失わないようにすることの方が大変だった。
 ターゲットがアトラクションによく乗ったことと、移動時、歩くのが速いこともあり、アトラクション内でターゲットと別れてしまった時に見失ってしまう事を想定して、<シャンクス>に出口付近で待機してもらい、<くぼっち>と<なっつ>が一緒に並んでアトラクションで待機しているターゲットの振る舞いを見るという形をとって調査した。そのため、1つ目のアトラクション、『レイジングスピリッツ』ではターゲットを見失うことなく調査を続けることができた。しかし、2つ目のアトラクション、『センター・オブ・ジ・アース』では「ターゲットがアトラクションに乗った」という連絡を<シャンクス>にすることができず、出口に現れる時間を想定できなかった。そのため、調査終了30分前でターゲットを見失った。あと30分追う事が出来ず、非常に悔しい。この時点で私たちの調査は終了した。
 このカップルを調査していて、一番面白いと思ったのは、『レイジングスピリッツ』で並んでいる際に、彼らの後ろに並んでいた全く面識のない女の子2人組と仲良くなっていたことだ。私たちは少し離れたところから並んでいたので、会話の内容までは聞き取ることはできなかったが、恐らく意気投合するような何かがあったのだと思う。今後再会するとは思えない、たまたまアトラクションで並んでいる人と話が盛り上がることなんて滅多にないと思うので、面白いと感じた。











4班

メンバー:<サラダ><じーや>
ターゲット:20代カップル(ペアルックに限る)

 今回のフィールドワークにおいて、私たち4班はペアルックの社会人カップルにターゲットを絞り、調査を行った。調査を行ったカップルは合計で2組になった。そこで、1組1組のカップルの様子を振り返ってみたい。

 まず1組目のターゲットは、20代前半くらいでお揃いの黒のトレーナーを着用しているカップルであった。女性がトレーナーの上から厚着のコートを着用していたため、トレーナーがお揃いであることは後ろからは確認出来ず、前方から見たときに初めて気が付いた。女性はペアルックを見せるためか、コートの前のボタンやチャックなどは開けていたのだ。しかし黒のトレーナーであったため、あまり目立つようなペアルックではなく少し控え目な印象を受けた。また、ペアルック以外の彼らの外見的特徴は、女性はキャラクターのカチューシャ、男性はキャラクターのかぶり物を着用しており、特に男性のかぶり物がオレンジ色で目立つものだった。そのため、私たち4班は男性のかぶり物を目印に調査をしていた。また、2人揃って所持していた荷物がかなり少なかったのも特徴的であった。2人とも肩掛けのバッグを持っていたが、これはおそらくお財布や携帯などの必需品程度しか入らないであろう大きさだった。
 次に彼らの行動の特徴を見ていく。彼らは特にアトラクションに乗ったり、キャラクターと触れあったりなどはせず、あくまで2人でスキンシップや会話を楽しんでいるようであった。そういった意味では、彼らは東京ディズニーシーを特別な場所として捉えて思いっきり満喫するというよりは、ふらっとお散歩にきたかのような雰囲気であった。特に何がしたいという目的や計画があるわけではなく、お散歩をしながら気になったお店に入ったり、おいしそうなものを見つけては食べたりといった楽しみ方をしており、東京ディズニーシーという場所であってもおそらくいつもとさして変わらないのであろう、まったりとした空気が2人の間を流れているのを感じた。手をつなぐ、肩を組むといった時々のスキンシップもぎこちないものではなく、とても自然な流れで行われていた。
 おそらくこのカップルは何かと女性が主体となって動き、男性は少々わがままにも見えるそれに多少振りまわされつつも、楽しんでいるのだろう。東京ディズニーシー内においても、ぶらぶらと歩きながら女性が興味を示して指を指した店に二人で入っていくという光景を何度も目にした。時には女性が男性の腕を引っ張って少々強引に誘導する様子も見られた。
 このカップルは11時頃パーク入りし、13時頃にゲートを出て行った。あまりに短い滞在時間に驚いたが、荷物が少なかったことやアトラクションにあまり乗っていなかったことを考えると、2日目の滞在なのかもしれない。
 2組目に調査したカップルは、まず年齢層から言うと、男性が20代後半から30代前半、女性が20代前半から20代後半位に見えた。2人はスニーカーとディズニーのパーカーをお揃いで身に着けていた。また、女性はキャラクターのカチューシャを付けていた。男性は少し値が張りそうなゴールドの腕時計をしていたことから、社会人ではないかと判断した。
 このカップルは、最初の時点では手をつないだり身を寄せ合ったりといった行動はなく、スキンシップが少ない印象を受けた。だが、男性の方はパーク内を歩いている最中にさりげなく手を女性の方に差し出して、手を繋ぎたそうにしていたり、腰の辺りに手をまわそうとしていたりと、スキンシップを図りたい様子が時折見受けられた。
 その後、1つ目に入ったアトラクション『タートルトーク』に並んでいるときに、2人のスキンシップが多く見られた。男性が女性の髪の毛を触ったり、女性が男性の肩に触ったり、腕を組んだりなどの様子が見られた。そして、『タートルトーク』のアトラクション内に入ると、キャストからアトラクションに関する説明を受けているときに手を繋ぎ始めた。私たちが観察していた間では、2人が手を繋いだのはこのときが初めてであった。また、3つ目に入ったアトラクション、『マーメイドラグーンシアター』でのショーを待っている際にも手を繋ぎかける様子が見られ、ショーを見終わってシアターから出る際にも手を繋いでいた。これらの様子から、パーク内を歩いているときよりも、アトラクションに入る前後でスキンシップが比較的多かったことが分かる。もしかするとアトラクションに入り少しテンションが上がったところで、お互いにスキンシップを取りやすい雰囲気になったのかもしれない。
 もう一点、印象的だったのは、ブラックペッパー味のポップコーンを2度にわたって購入していた点だった。1回目に購入したのは、パーク内を歩き始めてすぐ、数分経った頃であった。このとき、ポップコーンを入れる専用のケースも一緒に売店で購入し、そのケースを男性が女性にかけてあげていた。その後、歩いている最中やアトラクションに乗るときなどにポップコーンをつまんでいる様子がしばしば見られた。パーク内の敷地が広く歩き回る時間が多かったり、アトラクションに長時間並んだりする東京ディズニーリゾートにおいて、ポップコーンは小腹が空いたのを程良く満たすための必需品といえるのかもしれない。片手で手軽につまむことのできる菓子であるし、専用のケースを購入すれば首からぶら提げて持ち運ぶことができ、両手も自由になる。実際、このカップルのポップコーンの減りは早く、1つ目のアトラクションが終わった直後、またすぐに購入していた。

 調査の全体で感じたことは、2組ともあまりアトラクションに乗ることをメインとしておらず、まったりと風景やお店、食事などを楽しんでいる点が共通しているということである。次はどこへ行くという目的や計画があって歩いているわけではないためか、パーク内をグルグルと行ったり来たりしていて、移動距離は長いように感じた。また、今回ペアルックという条件に絞って調査を行ったが、2組とも着用しているものはパーク内でも販売されているディズニー公式のグッズであった。入口付近ですでにペアルックの状態だったため、事前に準備していたのかもしれない。ペアルックのカップルは普段街中ではあまり見かけないが、東京ディズニーシーではこの2組以外にも何組も見かけた。ペアルックでテーマパークに遊びに来ることも東京ディズニーリゾートでの振舞い方のひとつなのだと考えると、面白い現象だと感じた。

 









5班

メンバー:<薫><きぬ>
ターゲット:高校生カップル
(調査前まで制服を着た高校生カップルをターゲットにしていたが、なかなかパーク内で見つからなかったため、当日に私服の高校生カップルに変更)

 今回のフィールドワークは東京ディズニーシーの入口からターゲットを調査していたが、なかなか制服を着た高校生のカップルを見つけるのが困難であった。そのため、私服の高校生カップルに変更した。判断基準はその他に方法がなかったため、「見た目が高校生に見える」カップルをターゲットとした。
 計3組のカップルを調査した結果、「ボディータッチが多いこと」が共通点として挙げられた。1組目のカップルは、女性が生足にショートパンツ、それにパーカーを合わせていてスポーティな印象、男性は髪が長めでしきりに触り、腰でズボンを履くといったようにどちらも若い印象を受けた。女性のほうが積極的であり、パーク内を歩いているときから積極的に手をつなごうとしたり、男性のパーカーのポケットに手を入れたりしている姿が見受けられた。しかし、『サルードス・アミーゴス!グリーティングドック』(キャラクター・グリーティング)に入ると、その場所が階段を下りて屋根がかかっている場所に位置しており、人目に付きにくいからか男性のほうがスキンシップを積極的に取ろうとしていた。その際、女性は外を歩いていたときのような積極性は見受けられず、完全に受け身の姿勢になっていた。その後調査員の<薫><きぬ>も後について並んだが、撮影している間に見失い、調査を終了した。
 
 2組目は1組目よりもやや大人っぽい服装で、女性が黒のダウンコート・男性がジャケットだった。男性のリュックが星の飾りがあしらわれており、年齢が若いという印象を受けた。彼らはパークの入口からずっと楽しそうに話していた。『テーブル・イズ・ウェイティング』などの野外のショーにはあまり注目せず、食べ物を購入する姿がよく見受けられた。その際、2人で1つずつ購入せずに、ポップコーンなら半分ずつ、「うきわまん」(註1)なら女性がある程度食べたあと男性にあげるなど、分け合って食べていたのが1つの特徴であった。また、このカップルが最もアトラクションに乗る回数が多く、『ストーム・ライダー』、『ジャスミンのフライングカーペット』、『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』の3つのアトラクションに乗車した。アトラクションの待ち時間が短く、たまたま目についたものに乗っていた様子だった。アトラクションに並ぶ際は男性が必ずといっていいほど女性のダウンコートのフードの下に手を入れていた。このカップルが最も長い時間調査することができたが、『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』に乗車する際、便が別々になってしまい見失った。
 3組目は高校生カップルの中でも最も年齢が若いような印象を受けた。二人とも黒髪であり、女性のほうはストレートパーマをあてたようなボブヘアー、男性はスポーツ刈りのような髪型だった。この2人は最初からショップに入り、あまりアトラクションに乗ることは重要視していない様子だった。東京ディズニーシーの中心部に位置するプロメテウス火山を背景に東京ディズニーシーのスタッフに写真を撮ってもらうなど、思い出作りに徹していたようだった。その後、手を繋いで歩いていた。このカップルに関しては手をつなぐだけであり、その他のスキンシップは見られなかった。また、マップを見つつ歩いたり止まったりしており、あまり東京ディズニーシーには慣れていない様子であった。また、このカップルは「餃子ドッグ」(註2)を購入していたが、2組目のカップルと同じように1本だけ購入し2人で分け合って食べていた。この時点で調査終了予定時刻となり、切り上げた。

 この3組を調査してみて、最初に挙げた「ボディータッチが多いこと」のほかに「必ずパーク内を左からまわる」という共通点を発見した。このことは、東京ディズニーシーのパーク内の設計がコンビニの客の動かし方のように、何かしらの規則性を持たせて人々の動きを一定程度操作するように施されているものだと思われる。特にパークの入口を背にして左側には、できて間もない『トイ・ストーリー・マニア!』や人気アトラクション『タワー・オブ・テラー』などがあることから、人気アトラクション・話題を呼んでいるアトラクションを配置することで人の流れを操作するという狙いがあるのではないだろうか。
 そして、最後の調査報告会において他の年代と比較することにより、若い人ほどスキンシップを多くとっているという印象を受けた。今回の調査の場合、過剰なスキンシップは高校生カップルにのみ見受けられており、他の年代では手をつなぐ程度にとどまっている。このような年代によっての行動のとり方の違いについてはもっと詳しく見ていきたい点であった。

(註1) 「うきわまん」……『シーサイドスナック』(軽食ワゴン)にて販売している、うきわ型の肉まん。
(註2) 「餃子ドック」……【ミステリアスアイランド】から【マーメイドラグーン】へ抜ける道の途中にある、『リフレッシュメント・ステーション』(軽食ワゴン)にて販売している、餃子の中身を包んだような肉まん。











全体まとめ

 東京ディズニーシーは、入場して【メディテレーニアンハーバー】に入るゲートをくぐると、パークの真ん中にある海を取り囲むようにして道が左右二手に分かれているのだが、全体的に見ると、下の画像のように、入ってまず左の道に行くカップルが圧倒的に多かった。

map

これはターゲットのカップルだけでなく、他の来場客にもそのような傾向が見られた。そのおかげで東京ディズニーシー内には左回りの人の流れができていた。左回りの流れに逆らって歩いている人も何人かいたが、ほとんどが左回りのコースをとっているという事実は興味深い。入り口から入って左に歩いて行った先に、『タワー・オブ・テラー』や『トイ・ストーリー・マニア!』などの人気のあるアトラクションがいくつかあるので、東京ディズニーリゾートの運営側がそう意図して全体の流れを作っているのではないかと考えられる。運営側は、来場者に左回りのルートを辿らせることにより、ぐるっとパーク内を一周させるような意図があるのではないだろうか。実際、パーク内を右回りで回ろうとすると、いきなり階段が何段もあったり、その先に進んだ【ミステリアスアイランド】のあたりでは道が入り組んでいたりして、地図を見ないとどちらに進めばよいか迷いかねない。それに比べ、左回りのルートを辿ると、【メディテレーニアンハーバー】から【アメリカンウォーターフロント】を経由して、【ポートディスカバリー】に行くまでは大通りのような広い道が続いている。そのあとは近接している【ミステリアス?イランド】でも【ロストリバーデルタ】でも【マーメイドラグーン】でも、好きなところに行けるという構造になっている。これら3つのエリア同士は他のエリアと比べて距離が近いため、行ったり来たりしてもさほど時間がかからないようになっているのも興味深い。ターゲットとして調査したカップルのほとんどが、その運営側の戦略に見事乗っかっているのではないかと感じた。
 また、乗りたいアトラクションなどはっきりと目的地を決め、それに向かって歩いているカップルと、特にこれといった目的はなくぶらぶらと歩きながら雰囲気を楽しんでいるカップルというように、ターゲットとしたカップルの中ではパーク内での楽しみ方が大きく二つに分かれていることもわかった。今回、年代ごとにターゲットを定めて調査したが、調査前の予測では、高校生などターゲットが若ければ若いほど、アクティブにアトラクションを次から次へと回っていくのではないかと考えていた。しかし実際は高校生カップルもぶらぶらとした足取りでまったりパーク内を歩くことが多く、パーク内でのカップルの楽しみ方は年代によって必ずしも左右されるものではないということがわかった。また、ターゲットとは関係ない、複数人の友達グループの話し声も聞こえてきたのだが、そちらでは「次は○○に行こう」「そのあとは○○でこれを買おう」など、次から次へ行動を決めているような印象を受けた。もしかしたらカップルで来ているときはまったりと楽しみ、友達同士で来ているときはとにかくアトラクションを楽しもうとする傾向があるのかもしれないと推測することもできる。

 また、今回調査したターゲット全10組の中で、写真を撮っている組は2組だったが、どちらも高校生~30代など年代が若かった。ターゲット以外にも、パーク内で写真を撮っているカップルは同じように高校生~30年代くらいが多かった。若い年代の来場者は、思い出を写真で残しておきたいという思いがあるのかもしれない。

 そして、そもそも東京ディズニーシーは東京ディズニーランドよりもターゲット年齢層が高めに作られていると紹介されることが多い。ランドの方は平坦な道が多く、子供連れでも移動しやすくなっている。一方シーは坂道が多く、アルコールを販売しているレストランが多い。また、ランドよりもシーの方が、パーク外の景色が見えてしまったりするところが多く存在する。ある程度年齢がいっていると、そもそもディズニーリゾートに対して大きな夢を抱かないのではないだろうか。そのために、外の景色が見えてしまっても徹底的に隠そうとしていないのではないかと考えられる。そのようなことからも、大人をより意識してターゲットにしているのではないかと言える。それを踏まえると、走り回ってはしゃぐようなグループやカップルよりも、まったりしながらぶらぶら歩くグループやカップルが多かったのは、子供よりも大人をターゲットとしている東京ディズニーシーだからこその傾向なのかもしれない。たとえば2班が調査した1組目のターゲットは、女性が高いヒールの靴を履いていたのだが、思い切り遊び回るつもりならばそのような靴は履いてこないだろうという予想ができる。実際、このターゲットは次から次へとアトラクションに乗っているわけではなく、比較的ゆったりと歩いていた。彼女はもともとゆったりと楽しむつもりで来たのだろう。

 ターゲットとして調査したカップルの半分以上は、手をつないで歩いたり談笑したりなど、東京ディズニーシー以外のデートでもするような行動をしていた。しかし、写真をたくさん撮っているカップルがいたのも興味深い。写真を撮るということは、ディズニーリゾートという特別な場所ならではの行動なのではないだろうか。また、暗いアトラクションに入ると肩を寄せ合ったりするような場面も見られた。これもテーマパークならではの行動と言えるだろう。そして、ターゲットとしたカップルを全体的に見てみて、男性がリードしつつも女性に合わせるようなカップルが多いということに気が付いた。ターゲット以外の来場者を見てみても、カップルのうち女性だけがパーク内で売られているカチューシャを付けていることが多々あった。東京ディズニーシーをめいっぱい楽しみたい女性と、めいっぱい楽しませたい男性という構造ができているのではないかということも推測できた。

 今回、東京ディズニーシーにおいて年代ごとにターゲットを調査したが、年代ごとの行動に顕著な差があるというわけではないということがわかった。逆に、どの年代のカップルもおしなべて左回りのルートを辿っているということが興味深かった。ディズニーシーが来場者にもたらす影響と、その中で行動するカップルの様相を見ることができた。