1組目は、20代中盤位のカップルを調査した。黒い上着の男性と茶色いコートの女性だった。男性が、相手の女性の白い鞄を持ってあげていた。この調査は11時から開始したのだが開始して10分程で、『リストランテ・ディ・カナレット』という、高級志向のレストランに入ってしまったため、私たちの金銭的な問題もあり、断念せざるを得なかった。調査した時間は短かったが、途中でターゲットが『ヴェネツィアン・ゴンドラ』のキャストに何か場所を訊ねていたことと、その後すぐにレストランを発見して入店したことから、事前に店を調べて目的をもって来ていたとわかる。
その後、東京ディズニーシーの入口に戻って新たなターゲットを探した。ターゲットを見失ったり何らかの理由で調査を断念したりした時は、入口で新たなターゲットを見つけることになっていたからである。そこで、ヒョウ柄のマフラーとサングラスをし、グレーのカーディガンを羽織った男性と、全体的に黒い服でコーディネートしている網タイツの女性のカップルを発見し、ターゲットに決めた。年齢は20代前半くらいであった。男性は身長が高く、服装も相まって一見怖そうに見えた。このカップルは11時25分から調査を開始し16時30分まで調査をすることができた。
彼らの行動の特徴をいくつかあげていく。まず、彼らは絶叫マシーンが好きらしく、乗ったアトラクションは、東京ディズニーシーの中でも人気の『レイジングスピリッツ』と『センター・オブ・ジ・アース』という、絶叫系アトラクションだった。中でも『センター・オブ・ジ・アース』では120分という待ち時間を見て一度断念し、『ストームライダー』のファストパスを取ったものの、結局それを切り捨てて『センター・オブ・ジ・アース』に並んでいた。そして、お土産屋やキャラクター・グリーティングというディズニーキャラクターと記念撮影できる所には一切入らなかった。彼らはディズニーキャラクターのキーホルダーやカチューシャなどのグッズは身につけていなかった。また、脇目も振らず、寄り道もせずに目的地の乗りたいアトラクションまで向かっていた点や、メンテナンスで休止していた『インディー・ジョーンズ・アドベンチャー』には予め運行情報を知っていたかのように見向きもしなかった点から、彼らが東京ディズニーシーに来慣れていたり、事前にどのアトラクションが稼働しているのかもチェックし、計画を立ててパークを回っていたりしているということが窺えた。また、120分待ち、140分待ちのアトラクションに並んで乗っていたが、それらに並んでいる際は、沈黙は殆ど無く、終始楽しそうに談笑したりスキンシップをとったりすることもあった。それから、パーク内を移動する時は常に手をつないでいた。そして常に速足であったが、どちらかが引っ張っていく感じではなく、同じ歩幅で歩いていた。
はじめに、ターゲットとしてこの2人のカップルを見つけた時は、男性は怖そうに見えたが、彼らの楽しそうに談笑する様子や振る舞いを見ていると、とても微笑ましかった。また、彼らは歩くのがとても速かったため、彼らに私たちの調査が気づかれることよりも、彼らを見失わないようにすることの方が大変だった。
ターゲットがアトラクションによく乗ったことと、移動時、歩くのが速いこともあり、アトラクション内でターゲットと別れてしまった時に見失ってしまう事を想定して、<シャンクス>に出口付近で待機してもらい、<くぼっち>と<なっつ>が一緒に並んでアトラクションで待機しているターゲットの振る舞いを見るという形をとって調査した。そのため、1つ目のアトラクション、『レイジングスピリッツ』ではターゲットを見失うことなく調査を続けることができた。しかし、2つ目のアトラクション、『センター・オブ・ジ・アース』では「ターゲットがアトラクションに乗った」という連絡を<シャンクス>にすることができず、出口に現れる時間を想定できなかった。そのため、調査終了30分前でターゲットを見失った。あと30分追う事が出来ず、非常に悔しい。この時点で私たちの調査は終了した。
このカップルを調査していて、一番面白いと思ったのは、『レイジングスピリッツ』で並んでいる際に、彼らの後ろに並んでいた全く面識のない女の子2人組と仲良くなっていたことだ。私たちは少し離れたところから並んでいたので、会話の内容までは聞き取ることはできなかったが、恐らく意気投合するような何かがあったのだと思う。今後再会するとは思えない、たまたまアトラクションで並んでいる人と話が盛り上がることなんて滅多にないと思うので、面白いと感じた。